英名:Frankincense
学名:Boswellia carterii(ボスウェリア・カルテリィ)
和名:ニュウコウ(乳香)
科名:カンラン科
種類:低木
樹高:約2〜8m
原産地:紅海地方、アフリカ北東部
精油の抽出部位:樹脂
精油の抽出方法:水蒸気蒸留法
精油の香りのイメージ:わずかに柑橘の香りのする甘くウッディーな香り
香りのノート:ミドル〜ベース
ブレンドファクター:3
精油の成分例:
【モノテルペン炭化水素】α-ピネン(25〜35%)
【モノテルペン炭化水素】リモネン(10〜20%)
【モノテルペン炭化水素】β-ミルセン(2〜10%)
【モノテルペン炭化水素】サビネン(〜5%)
【モノテルペン炭化水素】パラシメン(5〜7%)
【モノテルペンアルコール】α-テルピネオール、リナロール(微量)
【セスキテルペン炭化水素】β-カリオフィレン(〜10%)
【酸化物】1,8-シネオール(微量)
近縁種インド乳香Boswellia serrata植物画:Wikipedia
和名は乳香(にゅうこう)と呼ばれる樹脂で、フランキンセンスの別名である「オリバナム」は「レバノンのオイル」の意味です。樹木は乾燥した半砂漠に生え、幹から滲み出る樹液は乳白色をしており、その様子は傷口から涙がしみ出るようだと形容されています。古代エジプトでは太陽神ラーに捧げられ、瞑想や宗教儀式に使用されてきました。古代エジプトでは日没に寺院で焚かれるキフィー(お香)の主原料として使われました。 聖書にも22回と数多く登場し、イエス・キリストにまつわる精油としても有名です。旧約聖書には「夕べの風が騒ぎ、影が闇にまぎれる前にミルラの山に登ろう、乳香の丘に私は登ろう」とフランキンセンスの事が記されています。2000年前には大変貴重な香料で、乳香は没薬と並んで金銀と匹敵するほどの価値がありました。精油はバルサムと呼ばれる典型的な樹脂の香りですが、柑橘を思わせる爽やかさがあり、深みはありながらも重厚ではありません。どの精油とも相性が良く、ブレンドに加えると上品なハーモニーを引き出します。
★フランキンセンス・セラータ★
フランキンセンス・セラータは学名をBoswellia serrataと言い、Boswellia carteriiとは成分組成が異なります。強い鎮痛作用のあるα-ツジェンが60%含まれ、抗炎症、抗関節炎作用があるとされています。フランキンセンス・セラータの樹脂も香料として用いられており、特に樹脂が固まって石のようになったものは香料世界では「薫陸」(くんろく)と呼ばれています。
★ イエス・キリストとフランキンセンス ★
フランキンセンスはミルラと並んで「イエス・キリストの精油」と呼ばれています。それはこの精油の原料となる乳香が幼子イエスに捧げられた事に由来しています。聖書では、東方の三博士がベツレヘムの星の流れた場所へと赴き、イエス誕生の贈り物として乳香、没薬、黄金の3つを捧げたと言われました。これらは当時としては最高級の贈り物であり、預言者イエスへの敬意を表すものでした。「マタイによる福音書」にはこのように記されています。『学者たちはその星を見て喜びにあふれた。家に入ると幼子は母マリアとともにおられた。彼らはひれ伏して幼子を拝み、宝の箱を開けて黄金、乳香、没薬を捧げた』これら3つの贈り物のうち、もしもイエスが乳香を選べば将来は偉大な預言者に、没薬ならば医者に、黄金ならば王になるだろうと言われていましたが、イエスはそれらのなかから乳香を選んだと言われています。その他にも聖母マリアが十字架に掛けられるイエスの足に塗った香膏に乳香が含まれていたと伝えられています。これが後にアノイント(聖なる油を塗る行為、聖別)となり、西洋で聖職者が死を迎える者に対して行うオイル塗布の原型になったのではと想像されます。現在のヨーロッパでもクリスマスの香りとして、フランキンセンス、オレンジ、クローブは定番の精油ブレンドです。
★参考「クリスマスの聖なる贈り物 乳香と没薬」
《フランキンセンス精油》の作用
一般的な精油に期待される作用:鎮静、瘢痕形成、皮膚細胞活性、通経、収れん、消毒、子宮強壮、癒傷、抗うつ、抗カタル、去痰、抗菌、抗真菌
心への作用:精神を安定させリラックスさせます。パニックや焦りの気持ちから呼吸が浅くなっている時に使うと深い呼吸を助けます。気持ちを鎮め安眠をもたらします。瞑想、変性意識の状態に入りやすくします。
ヒーリングの作用:目に見えない世界とのつながりを助け、第6感、霊感、直観力を高めます。祈りを捧げたい時、啓示や信じる力を得たい時に。ヒーリングの回線を開かせ、潜在意識や宇宙とつながる準備を整えます。死者との対話、前世や中間生のヒーリング、ハイヤーセルフ、マスターとの対話を行う際にも。
キーワード:霊的成長、瞑想、啓発
相性の良い精油:花、柑橘、樹脂、樹木、スパイス、ハーブ等、何にでもよく合い、主張する事無く他の香りを引き立たせ、ブレンド全体に深みを与え、良き保留剤となります。
《フランキンセンス精油》を使ったホームケアの方法
◆イライラ、うつ気味、不安感に
ゼラニウム、ベルガモット精油とブレンドしてアロマペンダントに詰めます。
◆瞑想、精神統一に
芳香浴、ルームスプレー、蜜蝋キャンドルに加えます。
◆願望成就、浄化、おまじないに
ローズやジャスミン精油とブレンドしておまじない練り香に加えます。
◆風邪、カタル、気管支炎のケアに
お湯を張った洗面器で吸引法を行います。
◆しわ、加齢肌、乾燥肌に
ローション、クリーム、美容液などに加えてスキンケアを行います。
《乳香(フランキンセンス)》 インセンスのプロフィール
薫香材として最も重要な香料で古代より宗教、儀式、美容法と深く結びついた歴史を持ちます。樹脂は幹に傷をつけたものが固まったもので、色は淡い黄色〜琥珀色、形は涙、しずく、卵、丸など様々です。フランキンセンスは真の(Frank)の香り(incense)の意で、「乳の香り」と称されるのはこの樹液が幹からミルクのように白く滲みだす様子が聖母マリアの乳を思わせるのに由来します。乳香を炭にしたものは古代エジプト女性のアイメイクに使用されてきました。現在でもキリスト教会では儀式の際に振り香炉(チェーンのついた専用香炉)で焚くのに使用されています。樹脂を燃焼させることにより精神活性物質であるトランスヒドロカンナビノールが産生され、多幸感を高めます。イスラム教徒たちは神聖さを保つためにモスクや住居を、そして子ども達にもこの香煙を焚きしめます。
★オマーン産乳香 アルホジャリ★
オマーン産の高級品の乳香は「アルホジャリ」と呼ばれます。乳香は樹脂の香り、外観、収穫地などによって等級差が決まります。オマーンでは岩が多くて乾燥した渓谷に乳香の木が群生します。乳香の木から多くの樹脂を採り過ぎると木が枯れてしまうため、オマーンでは春と秋の年に2回の収穫を行います。樹脂は柔らかいビーズのように幹から滴り、太陽に当たる事で透明な涙のような塊になります。高地で採れたものが最高級品で、収穫地から港へと樹脂を運ぶために今でも昔ながらのラクダが使われている場所もあるそうです。
注意:インセンス用の乳香樹脂は食品ではありません。
インセンスの使用部位:樹脂
一般的なインセンスに期待される作用:鎮静、浄化、霊的な成長、魔除け、催眠
インセンスとしての香りのイメージ:甘さのなかに軽い柑橘系の明るさのある香り
《乳香(フランキンセンス)》 インセンスの使い方
◆薫香材、お香に
専用香炉にチャコールを入れて焚きます。
◆ポプリ、匂い袋に
ポプリや匂い袋を作る際の良い保留剤になります。
◆手作りのインセンスや蜜蝋キャンドルに
乳鉢やミルで粉砕してインセンスや蜜蝋キャンドルの材料に加えます。
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