英名：Frankincense Sacra
学名：Boswellia sacra（ボスウェリア・サクラ）
和名：ニュウコウジュ（乳香樹）
科名：カンラン科
種類：低木
樹高：2〜8m
原産地：エチオピア、ソマリア、オマーン、イエメン
精油の抽出部位：樹脂
精油の抽出方法：水蒸気蒸留法
精油の香りのイメージ：フレッシュでフルーティーなバルサムと柑橘の香り、ほのかに甘い樹脂と木の香り
香りのノート：ミドル〜ベース
ブレンドファクター：4
精油の成分例：※ヴェッセル・エッセンシャルオイルズ
【モノテルペン炭化水素】α-ピネン（72.03％）
【モノテルペン炭化水素】リモネン（4.56％）
【モノテルペン炭化水素】サビネン（3.08％）
【モノテルペン炭化水素】カンフェン（1.69％）
【モノテルペン炭化水素】β-ミルセン（1.59％）
【モノテルペン炭化水素】β‐ピネン（1.45％）
【モノテルペン炭化水素】パラシメン（1.14％）
【モノテルペンアルコール】トランス-ピノカルベオール（1.09％）
【モノテルペン炭化水素】α‐フェランドレン（0.35％）

フランキンセンス・サクラ（ボスウェリア・サクラ）は「Boswellia carterii」（ボスウェリア・カルテリ）と同義のカンラン科の灌木です。これら2種のフランキンセンスは1980年代に同義とされていますが、植物学者の間では同種かどうかの議論が続いています。2つの種の起源には違いがあり、ボスウェリア・カルテリは「アフリカの角（Horn of Africa）」と呼ばれるエチオピア、エリトリア、ケニア、ソマリアなどから構成される地域）に、ボスウェリア・サクラはアラビア半島に生育する木を指します。実際の樹脂や精油の香りは明らかに異なっています。種小名の「サクラ」はラテン語の神聖な事柄（祈りや生け贄といった神々への崇拝にまつわるもの）に由来しています。エチオピア、ソマリア、オマーン、イエメンの石灰質の砂漠に自生し、高さ2〜8mに成長する小型の落葉樹で、樹皮は紙のような質感です。枝の多くは根元近くから伸びて5枚の花弁の黄白色の小さな花を咲かせます。花は蜜蜂を引き寄せ、小さな果実や葉はヤギやヒトコブラクダの餌になります。有用部は樹脂で有史以来、世界的に最も貴重な香料として金や宝石、絹などに匹敵するほどの価値がありました。樹脂の採取は木の幹や枝に小さな浅い切り込みを入れるか木の皮の一部を剥いで行います。切り込みから芳香性の乳状の樹液がしみだし、空気に触れることで凝固して樹脂となります。現在も行われているこの採取方法は、紀元前300年頃にギリシャの植物学者テオフラストスによってすでに記述されていました。古代エジプト人たちは、かつて「プント国」と呼ばれていたソマリアから乳香を輸入しました。古代における香料貿易の中心地は「アフリカの角」とオマーンを結ぶ「乳香の道」沿いにあった失われた都市ウバールで、この都市はコーランやアラビアンナイトにも登場しています。古代エジプトでは乳香樹脂は太陽神ラーに捧げられ、日没に寺院で焚かれるキフィ（お香）の主原料であり、没薬とともに死者の防腐処理に使われる重要な材料の一つでした。聖なる香料として聖書にも22回と数多く登場しイエス・キリストにまつわる香料としても知られています。旧約聖書には「夕べの風が騒ぎ、影が闇にまぎれる前にミルラの山に登ろう、乳香の丘に私は登ろう」とフランキンセンスの事が記されています。乳香樹脂は医薬品でもあり、古代のギリシャやローマの医師は様々な病気の治療に乳香を用いました。古代シリアやイスラムの医学、アーユルヴェーダ、中医学の文献などでも乳香が記述されています。11世紀のアラビアの医師イブン・シーナは体温を上昇させる感染症や病気の治療に乳香の持つ冷却効果を推奨しました。ボスウェリア属は25種が知られており、それぞれが独特の芳香と薬理作用を持つ貴重な樹脂を作り出します。サクラ（カルテリ）以外にもソマリア産の「ボスウェリア・フレレアーナ」、エチオピアやエリトリア産の「ボスウェリア・パピリフェラ」、インド産の「ボスウェリア・セラータ」などが知られていますがフランキンセンスのなかでは、この「ボスウェリア・サクラ」が最も珍重されています。特にオマーンのドファール山脈で採れたのものは「ホジャリ」と呼ばれる高級品で樹脂の色、粒の大きさ、形によって厳選されています。「ロイヤル・ホジャリ」は、通常のホジャリよりも大きく、形の整ったものに対して付けられる名称です。オマーンは岩が多く、乾燥した渓谷に乳香の木が群生しています。木から多くの樹脂を採り過ぎると木が枯れてしまうため、春と秋の年2回、手作業による収穫が行われています。樹脂は柔らかいビーズのように幹から滴り、太陽に当たる事で透明な涙のような塊になります。高地で採れるものほど良質で樹脂を収穫地から港へ運ぶのに今でも昔ながらのラクダが使われている場所もあるそうです。ボスウェリア・サクラの樹脂の色は不透明な白色、黄色、淡緑色、琥珀色、濃茶色、黒色など様々で香り、外観、収穫時期、収穫地などによって等級が決められています。なかでも淡緑色のボスウェリア・サクラの樹脂は「グリーン・ホジャリ」と呼ばれる世界的な最高級品でオマーンのスルタン（君主）が特別に取り分けておく逸品だと言われています。標準的なサクラの樹脂には明るい柑橘の香りにわずかなウッディ、バルサムが感じられます。ホジャリの樹脂はサクラよりも濃厚で甘い香りで、独特の琥珀色と強い柑橘系の香りがします。樹脂の主成分は主にテルペンでボスウェリア酸、酢酸インセンソール、フェランドレンなどが含まれています。ボスウェリア・サクラの樹脂には抗炎症、抗菌作用を持つボスウェリア酸が豊富に含まれており、香油や膏肓、チンキなどの利用に適しています。原産地では樹脂をガムのように噛む習慣もあります。最近の研究では、酢酸インセンソールが「TRPV3」と呼ばれる脳の受容体を刺激して不安や憂鬱を軽減させ、心地よさとリラックスの感覚を呼び起こすことが示されています。香煙に含まれるボスウェリア酸などの他成分も学習と記憶の改善を引き起こすと言われています。

★フランキンセンス・サクラ（ボスウェリア・サクラ）精油★
ボスウェリア・サクラ精油は樹脂から水蒸気蒸留法で抽出されます。芳香はフレッシュでフルーティーなバルサムと柑橘の香り、ほのかに甘い樹脂とウッディのアンダートーンが感じられます。カルテリ精油に比べるとα-ピネンの含有量が多く、血圧や心拍数を下げて血行を促進し、睡眠の質を良くすることで知られています。伝統療法では抗炎症、癒傷、防腐、抗菌などの作用から細菌感染症および傷、傷跡、炎症の軽減、ストレッチマーク、筋肉痛や頭痛のケアなどに使われてきました。スキンケアでは保湿、瘢痕形成、抗老化などの作用から特に成熟肌のしわ予防や日焼けによる乾燥を防ぐために化粧品や石鹸などに使用されています。どの精油とも相性が良く、天然香水や香油などのブレンドに加えると上品なハーモニーを引き出します。感情面では心身を高揚させ、浄化し、生命エネルギーを高めて魂を養います。一般にボスウェリア・サクラ精油は他のフランキンセンス精油に比べて高いエネルギー振動を持つと考えられています。聖なるオイルとして儀式、祈り、瞑想などの精神的な修養に使用されてきました。深遠な香りは呼吸を深くさせて精神性を高め、神聖なチャネルを開いて高次の意識を呼び覚まします。崇高で荘厳な雰囲気を醸し出し、別次元にいるような気持ちにさせます。

 《フランキンセンス・サクラ精油》の作用

一般的な精油に期待される作用：鎮静、瘢痕形成、皮膚細胞活性、通経、収れん、消毒、子宮強壮、癒傷、抗うつ、抗カタル、去痰、抗菌、抗真菌、抗炎症

心への作用：精神を安定させリラックスさせます。パニックや焦りの気持ちから呼吸が浅くなっている時に使うと深い呼吸を助けます。気持ちを鎮め安眠をもたらします。瞑想、変性意識の状態に入りやすくします。

ヒーリングの作用：目に見えない世界とのつながりを助け、第６感、霊感、直観力を高めます。祈りを捧げたい時、啓示や信じる力を得たい時に。ヒーリングの回線を開かせ、潜在意識や宇宙とつながる準備を整えます。死者との対話、前世や中間生のヒーリング、ハイヤーセルフ、マスターとの対話を行う際にも。

キーワード：霊的成長、瞑想、啓発

相性の良い精油：花、柑橘、樹脂、樹木、スパイス、ハーブ等、何にでもよく合い、主張する事無く他の香りを引き立たせ、ブレンド全体に深みを与え、良き保留剤となります。

 

《フランキンセンス・サクラ精油》を使ったホームケアの方法

◆イライラ、うつ気味、不安感に
　ゼラニウム、ベルガモット精油とブレンドしてアロマペンダントに詰めます。

◆瞑想、精神統一に
　芳香浴、ルームスプレー、蜜蝋キャンドルに加えます。

◆願望成就、浄化、おまじないに
　ローズやジャスミン精油とブレンドしておまじない練り香に加えます。

◆風邪、カタル、気管支炎のケアに
　お湯を張った洗面器で吸引法を行います。

◆しわ、加齢肌、乾燥肌に
　ローション、クリーム、美容液などに加えてスキンケアを行います。

 

《乳香（ボスウェリア・サクラ）》インセンスのプロフィール

ボスウェリア・サクラの原産地「アフリカの角」では、出産と産後の40日間は母親と新生児を守るために香が焚かれました。樹脂に含まれるフェランドレンは昆虫を忌避するとともに部屋の空気を清浄に保ちます。香煙はストレスを軽減し、精神を明晰にしてエネルギーレベルを高め、身体の自然治癒力を助けます。神秘的なチャネルを呼び起こし、こちら側とあちら側の世界を行き来するのを助けます。

インセンスの使用部位：樹脂

一般的なインセンスに期待される作用：霊的成長、浄化、保護

インセンスとしての香りのイメージ：柑橘を感じさせる明るくクリアな樹脂の香り

《乳香（ボスウェリア・サクラ）》インセンスの使い方

◆薫香材、お香に
　専用香炉にチャコールを入れて焚きます。

◆ポプリ、匂い袋に
ポプリや匂い袋を作る際の良い保留剤になります。

◆手作りのインセンスや蜜蝋キャンドルに
乳鉢やミルで粉砕してインセンスや蜜蝋キャンドルの材料に加えます。

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